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短歌作品*2004〜2006

 「 ハルジオン


草いきれ揺らして遊ぶ風連れて未知へ未知へと駆けゆきて、空



声もなく寄り添う肩のぬくもりに 和らいでゆく六月の風



葉漏れ日の柔きひかりの中に揺れ 記憶の糸をたぐりて遊ぶ



通りゃんせ天神さまの細道じゃ 唄えば遠き日もとこしえに



「いいなぁ」と友が羨む一人暮らし  さくら さくら 寂しくはない



テントウ虫 小指伝いて空めざす 背には七つの星を負いつつ



また次ぎの春風そよと吹く日まで揺られていろよ ハルジオン



猫踊る野茨小路(のいばらこみち)で逢いましょう
                   ささめく風の鈴音鈴音(すずねすずおと)





  君の見し世界


ぱらぽろん 雨の讃歌・傘下(さんか)にてこすれる肩に小さな火花



生乾きびらびら傘も広げれば ルネ・マグリットの空 映しこむ 



天つ陽とわたくしの間(ま)の永遠を 眺めすかしてトーストを食む



雲千切れ 燦燦(さんさん)うつろう夏の日に
                      アン・シャーリーの夢は育てり



ベランダで眠気待ちたる午前二時 東の京(みやこ)は冷たいにぎわい



八階のベランダまで吹き上がる夜風はヴィオラの淡きむらさき



夏空に負けじと開く向日葵の 咲いて咲いて朽ちろという



白砂を封じた小瓶傾ける  あの海に今、君はいるか



広がりに耐え切れないと泣く君に ぱらぱらと降る光の粒子



わが家族 沖の花火に誘われて いならび同じ闇を見つめる



木漏れ日を集めたように微笑みて日脚(ひあし)持つ人見えなくなりぬ



はらはらと日照雨(そばえ)流るるホームにて
                         人待つように列車待ちたり





  カンロ飴


カンロ飴 口の中にもてあます 涙なき別れもあったよ



来し道は時に足をもつれさす  靴の踵(かかと)よりすうらり伸びて



夕星(ゆうづつ)の燃える丘に立ち今ならば君に逢いにゆけると思う



JR新宿駅前  誰も彼(か)も迷子のような顔をしている



後ろから近づくブーツのカカカカカ 今日は幾分張り切っている



露店にて黄の風たてる群がりを掬い上げればひよひよと鳴く



余すことなく意味をつけたい 珈琲がほんのり苦く感じることも



雨雲のにわかに育ち軒先を探すでもなくただ駆け出せり



「たぶんね」と「そうみたい」ですり抜ける 断定できない心のままに



風を待ち羽を休むる鳥のよう 恋休(れんきゅう)期間と言える彼女は



扉無き君の心には幾重にも ビビッド・カラーのカーテンかかる



「じゃあまた」と遠のく君の声クリア  踵(きびす)返せば知らない背中





  「ピアニッシモ


君送る モルタル駅舎に留まりぬ 風と私と葉つきオレンジ



ひんやりと空風(からかぜ)に頬焦がされて 
                       銀杏一葉(いちよう)くるくる回れ



言の葉を紡ぐ力か ゆく夏の樹木はシュシューと蒼き息吐く



切り込まれしのち胸に差す光 君よ名をピアニッシモの声で明かせよ



太古の海・昨暮(さくぼ)の雨滴宿したる クスの太幹抱きしめている



タンポポの綿毛と共に旅をして 土へと還る風のなきがら



白 レモン 灰 モモ 群青 パステルの空は病室の眺めにもあり



濡れながら額あずけし ほつほつと毛玉のひかるセーターの背に



厚雲にうなだれる空押し返す メタセコイヤのしなやかな腕



クリスタルガラスピアスが似合うね、と言われて跳ねる二十歳と少し



グラニュー糖ふりまくような雪原にこのまま二人倒れていたい



足元の砂さらわれて淡雪の生まるるごとき遙かな波間






  「 キツネ哀歌


世渡りの方法知らず 愚かしく 優しきばかりのキツネをこそ愛し



ネコ舌の吾の傍ら ほくほくと うどんの揚げ食む君 キツネ憑き



「ごめんね」の印に花冠をかぶせるふりして頬かむりする



三度目のメニュー選びは慎ましく 月をぱきんと折りてかじれり



「おい」と呼ぶ親しさの距離はかりつつ コンコン後をついてゆきたり




  海の器


一声(いっせい)の反響にすら耐えられぬ氷の上で感じる鼓動(パルス)



もう少し空をください カクカクと夜空ふちどる都心ビル群



" Life is but an empty dream, " それでも君は宇宙の音節



地球にも落ち込むときがあるだろう ため息、苦笑、あるいは涙



石ころは磨り減っていく 生(なま)ものでも生きものでもない悲しみに



水を吸う土のごとく受け入れよう いつしか無に帰することも



与えらるるものをそのまま受け入れる 海の器持ちたる人よ



こんなかたちはいらない 指爪(しそう)より空 つま先より海に溶けゆく




  スタンド・バイ・ミー


霞む目に水晶のような光りを見 貴方のいない夢のあとさき



艶やかに透き通りており 生と死はアクアリウムの水槽のなか



「大丈夫?」軽い気遣い口にして張り無き胸のほつれ拡がる



「正社員の当て探しつつバイトする」 語れる友の瞳すがしく



「東京へ”帰る”といつより言いえるか」 幼友達ふりむきざまに



西日差す図書館二階のテーブルは私のものと密かに思う



飲み干せばなぜか誇らし アルコール7%のレモンチューハイ



終電に駆け込みよろめくつま先にひっかけているエデンの梢



ふるさとに帽子のごとくかぶさるる海に明るい木枯らしが吹く



ただいまと君の扉を叩くからいつの日にかスタンド・バイ・ミー






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